最初はそれが楽しかっただけで、


「倉本様……」


 彼をからかうだけのつもりだったはずなのに、


「は……っ、くらもとさま、」
「……っ、」
「……裕一郎様……すき、大好き……」


 彼が抵抗しないから、先にからかってきたからなどと言い訳を並べているうちに、恋幸はおかしな気分に襲われていた。
 生まれて初めて胸に芽生えた“その”感情の名前はひどく曖昧(あいまい)で、眠気も合わさってどう処理すればいいのかわからない。