恋幸の視界のはしで何かが動き、大げさなほどに肩が大きく跳ねた。

 しかし、少しして室内の仄暗さにも目が慣れ、裕一郎が自身の上に(おお)いかぶさる形で顔を覗き込んでいることに気がつくと、先ほどまで恐怖で高鳴っていた心臓が違う意味で鼓動を早める。


「……本当に、大丈夫ですか?」
「……く、くらもと、さ……」
「電気、つけましょうか?」
「だ、だいじょぶ、です……」


 彼の片手は恋幸の顔のすぐ横に置かれており、空いているもう片方の手が彼女の頬を優しく撫でた。