そんなことをしたところで鼻の奥に入るのはただの湯気でしかないのだが、彼が関わった途端にサボテンレベルまでIQが下がる彼女の脳みそは、


「……裕一郎様の匂いがする……」


 とても都合の良い錯覚を起こしていた。

 その後も恋幸は裕一郎についての妄想を続け、甘く鼓動を高鳴らしながら何となく、


(い、一応ね! 念の為ね!!)


 ……深い意味は無く、ただ“何となく”髪の毛と体をいつもより時間をかけて念入りに洗い終える。
 しかし、本当の『ピンチ』はここからだった。