もしかしなくても“そう”なのだが、目の前に再び現れた男性の存在は幻覚ではないだろうか? 本物ならなぜこんな時間にいるのか? そしてよりにもよってなぜ私は胸元に『寿司万歳』と書かれたクソダサパーカーを着てきてしまったのか? など、様々な感情が渦巻く恋幸の脳内は軽いパニックに陥っていた。

 そして、少しの思考フリーズ時間を置き彼女の口から出た言葉は、


「……なぜ、ここに現れた……?」


 確かに倒したはずの勇者がヒロインを助けに来た際、敵側の中堅幹部が唖然とした表情で呟くようなセリフで、場の空気は一瞬で凍りつく。
 しかし……二人の間に流れた静寂を先に切り裂いたのは、意外にも彼の方だった。