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そして、恋幸に3つ目のピンチが訪れる。
自室までの道も「実はまだ覚えていなくて……」と正直に打ち明けて裕一郎に付き添ってもらったため、迷うことなく辿り着き無事に着替え等も手に入れることができたのだが、本題は『そこ』ではなかった。
脱衣所に足を踏み入れた時も「わー! 広くて綺麗! 旅館みたいですね!」などと感嘆の声を漏らし、彼から恋幸専用のバスタオルを受け取った際も「ふかふか! ありがとうございます!」と喜んだが、風呂場の床を踏むその瞬間まで彼女は“重大な事実”に気が付けなかったのである。
「はっ!?」