そして今、彼女は何かの奇跡で時間が戻ることを祈っていた。


「……ああ、やっぱり。先週、モチダ珈琲店でお会いした方ですよね? こんにちは」
(あっ、なっ……なんで、和臣様がここに……!?)


 彼の名前は『和臣』ではないのだが、まずは恋幸が祈りを捧げるまでの経緯を説明しよう。
 ……と言っても、特に大きなイベントが起きたわけではなく、単に「小腹を空かせた恋幸が立ち寄ったコンビニの外で偶然あの時の『彼』に鉢合わせした」という流れである。


(あわわ……えっ? もしかして、私に声をかけてくださった……?)