同棲を提案されたその日の帰り道。
 裕一郎は「私からあんな事を言っておいてなんですが、今すぐこちらに転居する必要はありません。週に一度泊まりに来るだけでも構いませんので、少しずつ家に慣れてくれると幸いです」と限界まで恋幸を気遣ってくれたのだが、鼻先に人参をぶら下げられた馬よりも鼻息の荒い彼女が、


「そ、それじゃあ……毎週日曜日、来てもいいですか……?」


 などと、お(しと)やかになれるはずもなく。

 家に着くなり、恋幸は押し入れから引っ張り出したトランクケースと旅行用カバンに着替えとありったけの私物ほか、ノートパソコンを始めとした仕事道具を詰め込み、裕一郎との同棲ライフに思いを馳せながら眠りにつくのだった。