思わぬ提案に驚きはしたものの、恋幸はそそくさと座卓を回り込んで裕一郎の目の前に腰を下ろし、目を瞑って彼の腕の中に体を預けた。

 体育座りのままぽすりと収まる彼女を裕一郎は優しく抱きしめ、静かに目を伏せる。


「……いけませんね。貴女は読者皆の『日向ぼっこ先生』だというのに」
「いっ、今は……ただの、小日向恋幸です、ので……」
「……そうですね」


 今日は八重子さんが休みの日で良かったと、裕一郎は心の中でほんの少しだけそんなことを考えた。
 今はもう少しだけ、二人の体温を分かち合っていたい。