迷言とも呼べるあの言葉まで具体的に掘り返されてしまい、恋幸は熟れた林檎に似た赤い顔を俯かせたまま小さく頷く。


「理解できないものを教えることはできません。しかし、貴女が私以外の男に『男とは何たるか』を(おそ)わりに行くのは、想像しただけで少々腹が立ちます」
「……えっ!?」


 弾かれたように顔を上げ、幻聴だろうか? と自分の耳を疑う恋幸に向けられていたのは、どこか真剣な色を帯びた空色の瞳だった。
 恋幸はその透き通ったビー玉に魅せられ、相変わらずの無表情で彼の口から落とされた爆弾をどう処理するべきかわからずにいる。