「寝ちゃってすみませんでした……!」
「いえ、構いませんよ。よく眠れましたか?」
「は、はいっ!!」


 とっさに(いやいや『はい』じゃないよ私!)と自分に対してのツッコミを入れつつまさかの失態に落ち込む恋幸だったが、彼女の返答を聞いて裕一郎は「それなら良かった」とほんの少しだけ表情を緩め、恋幸の頭を優しく撫でる。

 第三者から見れば“たったそれだけ”と思える彼の行動も、恋幸の心を『幸せ』で満たすには十分すぎる効力を持っていた。


(ええ~……裕一郎様、優しい……仏……? 優しい、大好き……)


 と、心ときめかせる彼女をよそに、裕一郎はいつもの無表情で恋幸に向き直る。