彼は(いぶか)しげに目を細めた後、小さく息を吐き「ここでは話しづらいでしょうし、場所を移しましょうか」と言ってビジネスバッグに手を伸ばす。


「え? へっくっ、お、お仕事へっく……っ!」
「……午後からは休みにしてきたので問題ありません」


 その返しに恋幸はデジャブを感じ、今度こそ「私のことよりも仕事を優先してほしい」と伝えなければ! と数ミリ残った理性で考えたはしたものの、“前回”と違い裕一郎が自分に恋愛感情を抱いてくれているのだと知っている状況では、


(私のために有給とってくれたのかな……? 優しい、大好き……あっ、大好きポイント見つけちゃった……!)


 ときめき不可避であった。