「たしかに、そう、だけど……でも、私にはまだあの方と交際する権利なんてないよ……どこが好きなのか、はっきり言えるようになってから、その……かっ、彼女にしてくださいって……言うつもりで……」


 後半にかけて小さくなり消えていく恋幸の言葉。
 千は画面の向こう側で呆れたように目を細め、麦茶の入ったグラスをぐいとあおる。


『ひなこ。のんびりしてたら、』


 千の声に被さって、恋幸のスマートフォンがピルルルと鳴り響いて着信を知らせた。