『好きです。はい、ありがとうございます。私も好きです。それで完結できるのは中学生までなんだよ!?』


 先日放った「恋幸は仮にも恋愛小説家でしょう」というセリフが千の脳裏に再び強くよぎったが、同時に彼女の心に住まう悪魔が「まだ交際に発展していないのなら結果オーライだよ。下手にアドバイスするのはやめておこう?」と囁きかける。
 たしかに2人が彼氏・彼女の立場でないのなら、千にもまだ少しの勝機があるかもしれない。

 ――……だが、千にとっては“好きな人だからこそ”上手くいってほしい。両想いになれたのなら、そのまま幸せになってほしい。そう願ってしまうのは、もはや『本能』と呼べるほどに仕方のない心理だった。