彼女は19歳になったばかりの頃に裕一郎の父に雇われたが、家事手伝いとしてはまだ未熟だったため、当時2歳だった裕一郎の世話係を主に担当していた。
 裕一郎は成長するにつれ魅力溢れる社交的な好青年になり、その顔の良さも相まって小中高大と彼に言い寄る女性は数多く存在した。そして裕一郎も、初めに()いた仕事を23歳で辞職するまではただの一度も交際の申込みを断らなかったそうだ。

 星川は、それはまるで“何か”を忘れるため必死になっているかのようだったと言う。

 しかし、裕一郎の交際はいつも短期間で終わりを迎えてしまう。