「あの日……初めて、小日向さんに出会った時。何年も想い焦がれた“夢の中の女性”が目の前にいることが、とても信じられませんでした。結婚してくださいと言われた時も、私の幻聴ではないだろうか? と自分の耳を疑いました」
「で、でも……お断りします、って……」
「言ったでしょう? まずは、お互いのことを深く知るべきだと。それは本心です。……貴女から『前世』の話を聞いて、全ての事に合点がいきました。同時に……これは、運命だ。生まれて初めて、そんな風に思ったんです。ただ貴女という存在が、目の前に()るだけで嬉しかった……貴女に会っていた理由も、一緒に出かけた理由も、たったそれだけです」


 そこで言葉を切った裕一郎は恋幸からゆっくりと体を離し、彼女の両手をそっとすくいとった。