「……小日向さんに初めて夢で出会ったのは、小学校に上がったばかりの時でした」


 裕一郎は恋幸の頬から両手を離し、そのまま自分の方へ抱き寄せて彼女の頭を撫でながら言葉を続けた。


「と、言っても……所詮、夢は夢です。中学へ上がる頃には『夢の中で見た女性は、この世に存在しない。想い続けるだけ無駄だ』と理解して……勉強に没頭したり、他の女性と仲良くしてみたり。自分なりに、忘れようとしました」


 そう語る彼の声はひどく穏やかな音をしていて、恋幸は今、裕一郎がどんな表情をしているのか気になってしまう。