「……なに、を……ですか……?」
「色んな事を、です。私は……貴女に出会う前から、貴女のことを知っていたんです。そして、」


 裕一郎の大きな両手が、恋幸の頬を包み込む。


「あの日、あの店で貴女に出会うよりずっと昔から……私は、貴女のことが好きでした」
「……え……?」
「小日向さん、私は……夢の中で貴女に出会って、一目惚れしました。そう言ったら、貴女は……気持ち悪いと、思いますか?」


 まるでお伽話(とぎばなし)でも聞かされているかのように頭の中がふわふわして、恋幸は裕一郎の語る内容を素直に飲み込むことができなかった。