そう言いかけた恋幸の唇に裕一郎は自身の人差し指を軽く押し当てて、その先の言葉を封じてしまう。

 ずるい、ずるい。そうやってドキドキさせて、私に何も言えなくさせるんだ。
 そんな考えが“また”恋幸の顔に出てしまっていたのか、裕一郎は「ふ」と小さく息を吐いてほんの少しだけ表情を和らげる。


「……私のせいですよ」


 長くしなやかな指の背が恋幸の頬をするりと撫でて、


「もっと……早く、言っておけばよかったですね」


 ガラス細工に触れるかのような手つきで彼女の輪郭をなぞり、耳たぶに優しく触れた。