「正直に言うと……『お礼』なんて、ただの建前なんですよ」
「建前……?」


 髪飾りを付け終えた裕一郎は指先で恋幸の髪を(すく)い取り、毛先にかけてまるで名残惜しむかのようについと撫でながら口の端をわずかに持ち上げた。


「本当は、小日向さんに“これ”を付けてもらいたかっただけなんです。私のわがままに付き合わせてすみません」
「い、いえ、そんな……っ! わがままだなんて、ぜんぜん思いません……!」
「良かったです。……想像通り、貴方には桜がよく似合う」
「――っ!!」