彼の自室は高級旅館の宿泊部屋を彷彿(ほうふつ)とさせ、和の雰囲気に馴染む木製の本棚には小難しい小説がずらりと並べられている。
 ……その中に『未来まで愛して、旦那様!』が全巻紛れていると恋幸が気づくのはいつになるだろうか。


「実は、渡したい物があります」
「……? 渡したい物?」


 裕一郎は一つ頷くと、すぐそばにあった棚の引き出しから何かを取り出し、恋幸の真隣に移動して腰を下ろした。


「……これを」


 そう言って、彼は綺麗にラッピングされた小さな箱を差し出す。