いったい何が起きているのか。
 彼女の脳では理解が追いつかず、思考の整理ができるまで待つはずもない裕一郎は抱きしめる腕に少し力を込めた。


「……どうして、いちいちそんな可愛いこと言うかな……」
「えっ、えっ? あっ、あの……」
「ありのままを知りたい、なんて言われたら……調子に乗ってしまいますよ?」


 少し体を離した裕一郎は、恋幸の瞳を覗き込み額同士をこつんとくっつける。


「……っ、ちょ、調子に、乗って、も……良いと、思います、よ……?」
「……はい、覚えておきます」


 バクバクとうるさいこの心臓の音が、耳の良い花に聞こえてしまっていないだろうか?
 そんな考えも、恋幸を映す空色のビー玉がもたらす熱のせいで、全て溶けてしまった。