木造の廊下をひたすら突き進み、L字型の角を曲がったところで裕一郎は足を止めて振り返った。


「ここです」
「ここ……?」
「はい。この一室丸々を、我が家の小さな家族に与えているんです」


 どこか優しい声音で恋幸にそう語る裕一郎の表情が、ほんの少しだけ和らいだように感じる。
 彼は一言「大きな声や音は出さないように気をつけてください」と付け加え、恋幸が頷いたことを確認してから(ふすま)を静かにスライドさせた。


「どうぞ。……花、ただいま」
「お、お邪魔しま、……っ!?」