彼の家へ向かう道中、千に投げられたあの時の言葉が何度も頭の中で繰り返されていた。





「ここが私の家です」
(え……?)


 車を20分ほど走らせて辿り着いたのは、恋幸が想像していた通りの高層マンション……ではなく。
 木で造られた立派な門に、凛とした佇まいの和風住宅。広大な土地を囲む竹垣(たけがき)は敷地がどこまでも続いているかのように錯覚させており、目の前にあるのはどこからどう見ても『豪邸』と呼ばれる建物だった。