解決策を見つけ安堵(あんど)する恋幸の心を見透かしたかのようなタイミングで、先に食べ終えていた裕一郎はコーヒーカップをソーサーに置くと、伝票を手に取り立ち上がってしまった。
 とうぜん、焦った恋幸は小声で裕一郎を呼び止め彼の服を軽く摘む。


「……どうしました? 食べていて構いませんよ。……ああ、まだ他に食べたい物がありましたか?」
「そ、そうじゃなくて……! 今日は私が払います! 車を出してもらってるのに、昼食代まで倉本様に払わせるわけには……っ!」


 彼女の手を優しく掴んだ裕一郎の体温が、その先の言葉をいとも簡単に溶かしてしまう。