「……目当ての物がありませんでしたか? でしたら、昼食は別の」
「いえ! ありました! これが食べたいです!」


 店内の雰囲気を損なわないよう恋幸が声を潜めてメニュー表の写真を指差すと、裕一郎は「よかった」と呟き、席に用意されていたベルをチンと鳴らした。
 少しの間を置いてやって来た店員に慣れた様子で注文を済ませた彼に対し、恋幸はときめくと同時に心の中で軽いパニックに陥る。

 見間違いでなければ、自分が注文したパンケーキはなんと1000円もする代物だった。さらに、「飲み物はどうします?」と聞かれつい一緒に頼んでしまったクリームソーダが650円。