しかし、店の入口まで来て「やっぱり別の所が良いです! ハンバーガーとか食べませんか!?」と言うのも躊躇(ためら)われ、店員に促されるまま扉をくぐり案内された席へ腰を下ろして熱々のおしぼりで手を拭いてからメニュー表を開く。

 運ばれてきたお冷を見た時点で薄々“そう”だろうなと勘づいていた恋幸だが、メニューに目を通したとき改めて現実を突きつけられた。


(や、やっぱり……ここ、『良いお店』だ……っ!!)


 そういえば、裕一郎が先ほど「以前から気になっていたお店があるんです」だとか「男1人で入るのは(はばか)られまして」などと話していた気がしなくもない。