ただ今、恋幸は葛藤(かっとう)最中(さなか)にあった。

 歌詞はよくわからないがとてもシャレた英語の曲が流れる店内で、目の前の3段パンケーキにゆっくりとメープルシロップをかけ頭を働かせる。


(……どうしよう……)





 車内で起きた『出来事』に脳みそを乗っ取られていたせいで、駐車場に入ってからこの店に着くまで裕一郎の話に対しても上の空。
 うなじを眺めながらぼーっと後ろをついて歩き、筆記体で書かれたスタンド看板を見た瞬間に恋幸はようやく我に返った。