「……」


 裕一郎の指は一度恋幸の頬を撫でてからハンドルに戻り、彼女を捕らえていた空色の瞳が逸らされたことで恋幸はようやく息を吐き出せた。


(えっ、え……っ!? な、なに……? いま、)
「……お腹、空きましたね」


 まるで何もなかったかのようにぽつりと呟いた裕一郎に対し、恋幸は火照(ほて)って仕方がない頬に両手を添え「はい……」と頷くことしかできない。

 時刻は12時11分、恋幸の腹が鳴く頃だ。