「……話、聞いていなかったんですね?」
「ちっ……! がわな、い、です……はい、すみません……倉本様の指について考えてました……」
「指?」


 わずかに首を傾げた彼に対し、恋幸は一つ頷き「綺麗だな、って思って」と素直に打ち明ける。

 その返事を受けて彼は前を向きなにか考えるような素振りを見せたが、少しの間を置いてから眼鏡の(ふち)をついと押し上げ恋幸に向き直った。


「……」
「……? くらも、」