翌日迎えたその日に、クラスは夏のいないがらんどうだった。代わりに何事もなかったみたいに現れた新しい生徒は、銀杏だとか紅葉だとか、金木犀だとか。なんだか妙に小洒落ている。
秋を嫌いだと謳うひとは多い。春と違って、何もかもが冬にかけて切なく散り行くからなんだそうだ。私はその秋を牛耳り、暦の指示のもと今度は夏生みたいにこのクラスをまとめなくてはならない。
終わり行く辛気臭い物悲しい季節だと嘆いてもらってもいい。夏と比べるたびひとりごちて、その度夏があったことを思い出せるから。
「あれ?秋尾さんは?」
「知らね。サボりじゃん」
「またか」
「………さむ」
お気に入りの屋上で、トントンと煙草の横腹を叩いてやる。咥えて火をつけてから、二口目を干上がった植木鉢の双葉の横に刺してやった。これは夏生のお墓である。多分そのうち枯れるんだろうけど、最近は雑草ばりにすくすく育っている。年中咲いてるなんとかっていう種類の芽なんだそうだが、なんだったか忘れてしまった。