「また今度な」
今度っていつだよ、と思う。
果てのある有限の中、ひとは生きているうちにたくさんの誰かに出逢うけれど、きっとこれ以上ないって出逢いにぶつかるたびに別れ、怯え、繰り返し、そして前に進んでいくのだ。
否が応でも折り重ねられる四季の中、この重なりはもう二度と出逢えない。次の夏は茅野ではない違う誰かで、次の秋は消えた私の後継者。
消えたらどこにいなくなるんだろう、と思う。でも考えるだけ無駄だ。この緩急に大衆が何を言う前に、夏は終わり、秋を迎え、冬になり、春が来るのだ。
ならば私は、せめてその連なりを待ちわびて見せよう。
「燈火」
今にも消えかけた薄明かりの中、夏生が私の視界を手で塞いだ。唇に最期に触れた感覚を追いかけて目を開くと、そこにはもう誰もいなかった。
ただ、風の音だけがした。