◇
「聞いていてわからないことが多いのだが、つまりシンの父親は母親……自分の妻の蘇生を行おうとしていたのか?」
「蘇生、うーん、まあ、そうねええ、そんな綺麗なものじゃないんだけどおお当時はそれしか方法がなかったのねええ。禁号第六魔法憶剥受新体、って言ってええ、古代の魔法技術なんだけどおお、禁号魔法自体が何でもできるかわりにその反動がとんでもない、ってシロモノなのねええ」
命一つじゃたりないくらい、とイーズが言う。
現代までの魔法には大きく四つの区分がある。魔法をあやつる種族なら誰もが使える当然の力である「然用魔法」、精霊と翼種の上位三種族のみが使える「施天魔法」、旧世界の技術であり効果の倍以上の副作用を必要とする「禁号魔法」、そして魔法族が独自に編み出した「真魔法」の四つ。
「真魔法? ってまさか」
「そ、この北の壁のことだね」
大きく四つに分けられている魔法には、それぞれ数字が振られている。然用第一魔法、施天第二魔法、禁号第三魔法、のように。数字の大きなものであるほど難易度が高く魔力消費量も多くなるのがほとんどだという。
「北の壁の正式名称は、真第九魔法我捨区域包囲結界って名前なんだべな。略して真・第九区域結界。それ自体を作ったのは別にアマルティアじゃないし本来の用途はもっと別だったはずだべ」
それはまあ、そうだろう。結界というのだから本来は外敵から身を守るために使うもののはずだ。でもだったらなおのこと、内側からのダメージを想定していないものをシンが千年もここに居て破れないなんてことがあるのだろうか。第一、術者に該当しそうな人物や精霊はここには存在していない。内側には、いないのだ。
結界の術者というのは戦闘中、その強度を支えるためにほとんどの魔力を注ぎ込み意識を集中させる必要があるのだという。
人為的に見えた北への入り口。あの門も、あれは南からやってくるものを強く拒んでいる。そうじゃなきゃ何十人も北の山で死んでるわけはない。中に入るのは難しくなかった、シンに会うのもそんなに珍しくないのだろう。問題は雪だ。すべてを覆いつくし飲み込む白銀。あれは確実に中に入った人間を殺そうとする吹雪だ。
つまり外からでは手が出ないし、中に入ると死ぬまで狙われる。そういうのを結界と呼ばないわけがなかろうとジオルグは次の質問を促した。