耳に聴こえるのは心が弾むような陽気で楽しい音楽。
広いテラスには人がそこそこいて、子連れもいるし僕たちのようなカップルもいる。
テラスから覗く先には行き交う人々の楽しそうな足取りがあり、もしくは、これから数十分後に始まるパレードの場所取りに完全装備で座り込む人々も見える。
平日でこの賑わい、休日の賑わいは相当のものなんだろう。さすが有数のテーマパーク。

僕の目の前で今、食事の写真をパシャリと数枚撮り終えて悶ているのは陽奈子だ。
可愛いものが好きで、美味しいものが好きな陽奈子の大好きなテーマパークに今日は遊びに来た。
陽奈子はひとりでも来るくらい好きな場所で、今日のプランは任せきりだ。
早朝の新幹線に揺られ、身体は疲れていなくもないのに気持ちが高揚していてそれを感じない。
何度が来たことはあったとしても、それは数えるくらいでしかない僕は、異空間にでも迷い込んだように見るものが物珍しく心なしか浮かれているのは実感している。

「かわいい……可愛いのに、食べられないくらいかわいいのに」
「その可愛いのと俺とどっちが好き?」
「その質問が本気のやつなら一発アウトだからね」
「わかってるよ」

くくくっと、笑いを奥に噛み殺して、真剣な様子の陽奈子を見守る。
幾度となく来ていて、きっと食べているはずなのに真剣に悩むその様子が面白い。
その後、僕は可愛いキャラクターを模したハンバーガーにかぶりつく。うん、美味しい。
テーマパークのご飯としてでなく食べたとしても美味しい。
一通り可愛いと悶た後、バーガーにかぶりついた陽奈子は、美味しいと目を細めていた。