《私はお前の物語にはならない》







 僕が僕の物語を頭の中で捕まえたとき、きみは僕にそう言った。

 言葉に拒絶されたとき、僕はそれが初めてでなんのことかわからなかったけれど、生きながら心がついに死んだと思った。

 手を伸ばして待って、と呼びかけた僕に君の左足が頬を切る。それは完全な拒絶で、掴めなかった僕を嘲笑うかのようにきみは何処かへ消えてしまった。

 あの感動を、音を、光を、映像を頼りに歩いてきた僕がひとつひとつ積み上げてきたもの、その一部が音を立てて崩れたとき、僕は僕で無くなって、











 小説家は筆を折る。











 ぽきん、と折れた心ごと、僕は笑って部屋に倒れた。