「やあ光よ、どうして東から昇り西に沈んでいくのか。家鳴りが最近ひどくてね、家の中に伸びた光をこの時間僕はよく追うよ。まっすぐ伸びた陽光に手をかざし、その度に檻に潜み怯えるきみを待っている。きみへ、きみの物事の評価指標はその目がいつも映しているよ、自己責任だ。溺れ、浸水した君のせい。綺麗な言葉に触れ、舐めたとてお前の浅はかさと愚かさは変わらない。僕らは所詮僕ら以外の何者にもなれやしないのだ」
《お前は何になりたかった》
「僕はそうだな、次にヒト以外に生まれ変わるのなら地面に生える草がいいな。口が利けない、時に散歩中の犬に踏まれ、アブラムシが付き、そして尿をかけられて、けれど青虫が自分の糧にしやがて蝶になるだろう。その頃疫病に侵された僕の身体は冬、地面に還るけれど、また命が芽吹く時、僕がそこにいないといいことを願おう」
《お前、お前はお前の愚かさを知っているか》
「僕は僕の愚かさを一番に知っている、この存在の罪深きことを誰よりも知っている、生んだ母よ、見届けた父よ、その二人はくだらない命の生産をした、それは楽園追放だ。生まれ落ちること。それは天国からの追放に違いない、この世に生まれ落ちた時に人が泣く理由を知っているか、生まれたことを嘆き悲しんでいるのだよ」
《それは偉人の言葉だ》
あとからそうだと気付いて名言を残したとて、先に生まれ、同じことを言ったが勝ちだ。惑星、宇宙、そんな言葉を並べたとてこの愚かさも醜さも変わらない。生まれるのが遅かった。時代が僕に気がつくのが遅かった。
世界、世界よ、いつ僕に気がつくというのだろう。
早く産まれすぎただけだというのか。