お嬢様のお使いを頼まれた俺は、町外れの洋館へ来ていた。
 誰も住んでいない古びた洋館に取り残された人形を取ってきて欲しい。そう伝え聞いた俺はいつもと違うバスに乗り、長い間誰も通っていないと思われる山道を登ってそこへたどり着いた。
 外れかけた門扉を押し、雑草をかき分けるように玄関まで進む。
 鍵はかかっていなかった。
 中に入って埃の積もった床に足跡を見つけると、それをたどった。台所の床に地下へと続く扉があった。足跡はそこで終わっている。目的の物は地下にあるのだろうか。小さなペンライトを鞄からだして灯す。真っ暗な階段を下りると部屋の中にピアノが取り残されていた。
 どんな人が住んでいたのか知らないが、こんな高価なものを置いていくとは何があったのだろう。いや、建物を建てた時に入れたピアノは、越していく時には小さな扉から出すことができなかったのだろう。