月に一度、私の千里眼を頼って客人が訪れる。
 大金をはたいて面会を要求してくるのは、政治家、投資家、事業家、そういった類の者たちだ。
 私の目に何が見えているのか、彼らは知らない。その黒く渦巻く欲望の底を覗きこむわたしの恐怖もまた知ることはない。
 面会を終えて疲れ切ったわたしを、依里が寝台へ連れていく。
「お嬢様、お顔の色が真っ青です。早く横になってくださいまし」
「大丈夫。陽太を呼んできて」
「また陽太ですか。私がおそばにおりますよ。なんでもいたしますからおっしゃってください」
 依里の言葉はありがたいが、わたしには陽太の光が一番の薬なのだ。けれど、依里を困らすなと言った陽太の言葉を思い出し口をつぐんだ。
 暗闇の中におぞましい怪物がいるようで寒気がする。どこを向いても暗闇しかない。絹の覆いに手をかけて引きはがそうにも、子どもの頃、わたしが言いつけに背いて目隠しをとったばかりに鞭に打たれた泰司の傷だらけの背中を思い出せば手が震えた。
 泰司は目隠しをとったわたしの目の前で何度も鞭に打たれた。飛び散った血がわたしの頬や手をぬらした。