学校へ行ったところで、目の見えないわたしが陽太と同じように授業を受けられるわけではない。
「そこから歩くから車をとめて」
 まだ朝早い時間に、登校する生徒の影もほとんどなく、私は陽太のとなりをゆっくりと歩く。
「あまり依里を困らすな」
 陽太がぶっきらぼうにそう言った言葉にわたしは足が止まりそうになるのをこらえて、何でもないように歩き続けた。
 依里をかばっているようにも、陽太自身が迷惑がっているようにも聞こえるその言葉はわたしの心に爪でひっかいたような傷を与えた。
「依里が紫陽花が咲いているというから」
 だから何だというのだ。わたしの両目を覆う絹に触れると、ピリと指先に軽い痛みが走った。ほどこうと思えばいつでもほどける。泰司の施した封印など外を見たいと思うわたしの気持ちの前にはどれほどの効果もない。
 けれど、それをすれば罰せられるのはわたしではない。
 少し前まで同じ背丈だと思っていた彼は、いつの間にかわたしを置いていこうとするかのように高い位置からわたしを見下ろしていた。