「陽太はもう小さな子どもではありません。自分のことは自分でなんとかします。わたしがそのように育ててきました。陽太を信じてお待ちください」
 泰司は動じることなく静かにそう言って部屋の外へ出た。
 わたしが力を使わぬようそこで見張っているつもりなのだ。
 そうして3日が経った。
 陽太から何の連絡もないまま、得られたのは町外れのバス停でバスを降りたという情報だけだった。
 わたしは居ても立ってもいられず、そのバス停へ向かった。

 少しでも陽太の光を感じられないかと辺りを歩き回った。
 依里が手をひいてくれていても、何度も下草に足をとられ転びそうになった。
「お嬢様、もう帰りましょう。陽太のことなど心配する必要はありません。どうせ修練が嫌で逃げ出したのです」
 そう言いながら依里の手から震えているのが感じられる。依里にとっては弟なのだ。
「もう少し。この辺りにいる気がするの」