陽太がいなくなった。
 こんな時にわたしの目を使わずにいつ使うというのだろう。
 わたしは泰司を呼んだ。
「使用人のためにその力を使うなどもってのほか。陽太のことなど捨て置きください」
 泰司が陽太を心配していないわけがない。己が罰せられることを案じているわけでもない。
「わたしはこの先一生、この目隠しを外せなくても構わない。けれど陽太を失うことだけは耐えられない。ほんの数十秒でいいの。それで陽太を探せる」
 泰司のかけた封印をわたしが無理に解けば父に知らせが行く。泰司が罰せられぬよう、父に気付かれずに力を使うには泰司の協力が必要だった。
「お嬢様の力はめったなことで使ってよいものではありません」
「自分に与えられた力を私が本当に使いたい時に使って何が悪いの。あんな悪魔のような大人たちのために使うしかできないのならこんな力は無い方がましでしょ」
 泰司に八つ当たりしていると分かっていても、言わずにいられなかった。