差し出せば差し出す程、愛おしさが募るのは何故なんだろう。

「アヤカ、何を考えている?」

カンジと首都の高層ホテルから
ダイブをした後に、
出会った華僑の令嬢マイケル・揚。
彼女が、わたし達に用意してくれた最新海外キャンピングカーは、
異世界から来た
魔導師という人物に、
認識阻害を施されいる。

けれど車体の大きさは否めない。

かつて武家政権による都が敷かれた此の地は、
只でさえキャンピングカーでの
観光には向かないから、

カンジは車を、
キャンドル塔がある、
陸繋島に停める事にした。

島は、
キャンドルナイトのイベントで、
幻想的な光に包まれて
此の世でない雰囲気さえある。

「キャンドルがこんなにも綺麗
だと、皆んな夜に恋をして、
太陽を忘れちゃいそうだわ。」

キャンドルの塔の下。
一際蝋燭の光が揺れるガーデンで、
わたしは少し夢心地だった。

「思えば、アヤカとの逢瀬は、、
何故か月夜と決まっていた。」

『来て、優しいくも熱い夜。
来て、堕ちる漆黒の夜、
わたしにカンジを縫い止めて』

カンジとは最後だと決めた夜を、
思う。

「昼には会わない約束だったのだもの。」

わたしが、まだ
カンジの愛人の1人だった頃。

わたしはいつも、
決められたホテルの部屋、、

カンジが待つ部屋をノックする
まるで、夜鳴鳥みたいだった。

情事が終わった朝に目が覚めると
カンジは去った後で、
わたしは独りベッドに残されている。

結局はカンジも、
帝国星からタイムリープした
ポイントが
あの部屋のシャワールームだった
だけなのだけれど。

キャンドルが揺らめく庭園の中を、
カンジにエスコートされながら
歩く。

わたし達と同じ様にカップルが
イベントを楽しむ中、

「おぬし、一体何者だ?」

突然目の前に現れた、
小男に声をかけられる。

「「・・・」」

こんな時には不用意に返事は
しない。

この街は
異世界と空気が近いから、
夕暮れに人でないモノと、
すれ違うのは珍しくない。
それこそ落武者や、妖怪らしき
物なんて事もある。

彼らは人に悪戯をするだけで
なく、
取り憑く事で己の願望を遂げる
から、
無視をするに限るのだけれど。

ただ、

目の前の小男は、
明らかにカンジの身体を甜める
ように見てくる。

「そこのお前こそ、不躾だな。
 人間なんて履いて捨てるほどいるだろうが。」

カンジが小男に、
凍るような視線を向ける。

小男は少したじろいで
木陰の闇に隠れた。

「よく言うぞ、おぬし身体が
 発光しておるぞ。
 人間が発光するのは見た事が
 ないや。おぬし、異形の血だろ?
 その内、他にも寄ってくる。」

小男は、
半分だけ顔を覗き出して、
カンジの入れ墨がある辺りを
指し示した。
彼こそ何の妖しなのかと
思いながらも、

「カンジ。貴方いつも妖かしに、
 声を掛けられるタイプなのかしら?」

カンジはわたしの肩越しに、
ニヒルな笑いを浮かべて
揶揄する。

「残念ながら、ナンパされる質
 じゃないな。これまでは此方から声を
 かける事はあったが、、」

「あら、わたしがカンジの愛人
 だった頃ね。」

だから、
わたしも敢えて意地悪な言い方を返した。
でもそれだけでは
話は済ませそうにない。
少しずつ周りの闇が
濃くなる気配。

「けれど可怪しいわね。
 もしかして、、異世界からの魔導師が
 施した術の作用かしら。」

「可能性はある。首都ぐらいなら
 ネオンに紛れるだろうが、此の辺りでは
 目立つのかもしれないな。」

雰囲気が変わるのにも、
特に気にしないカンジは
言うけれど。
わたしは周りを見回した。
気が付けば人成らざるモノへと
人が変わっている。

そのタイミングで、
小男が木陰から這い出てくる。

「おぬしら、旅人か。おぬしら
 だろ?昼間に術を使って時超えをしたのは。
 何をしている。」

どうやら、わたし達が
リヴァイブした事を
彼は言っているみたい。
妖し達には何かしらの影響が
あるのだろうか。

「おぬしらみたいなのが珠に来るが、
 大した事がない。誰も気にもしとらんが、
 おぬしの光は別よ。」

「今、我々みたいなのが来ると
 言ったか?」

キャンドルナイトの庭園から、
何故か祭の提灯に灯りが
変化している中で
小男がニマリと笑う。

「カンジ、、わたし達以外の
 母星人が来ているってこと
 かしら、、」

カンジが無意識なのか、
わたしを腕の中に閉じ込める。
これは、周りに警戒している証。

「まあ、人の言う何百が年程前じゃが、
 おぬしらも時超えをするなら、知り合いかもしれんな。
 あの者はオナゴだけじゃったが、
 おぬしみたいに発光しておったよ。」

「その時、その女は何をしていた。」

わたし達の遣り取りに、
祭灯りを歩いていたモノ達が
チラホラ視線を
投げてくる。

「ふん、賢いオナゴじゃったよ。
 美貌を使って、男らに探し物をさせておったな。
 火鼠の唐衣やら、燕の子安貝、」

!!!

「待て!蓬莱の玉の枝もか!」

カンジが思わず、
小男の肩を掴みあげて、
問い詰める!!

「おうよ、人の話でも有名だからなあ。」

「カンジ、、もしかして、、」

わたし達は
お互いを見つめて、カンジが
言葉にする。

「竹取の翁の姫は、母星人だったか。」