「教会で聖水を買えないか交渉ですかね」
「教会か。この身体だし、入った事がないから何とも言えないな」

 アーニャとヴィックがアンデッド対策について意見を交わしている所で、トイレに行く振りをしてポーションを取って来た俺は、背後からヴィックにポーションを掛けてみた。
 だがポーションが床に落ちただけで何も起こらない。
 Fランクのポーションは、効果が弱すぎたのだろうか。
 ならば……と、倉魔法でBランクのバイタル・ポーションを取り出すと、ヴィックの頭の上からポーションを掛けてみた。
 しかし結果は同じで、ただただ床が濡れただけだ。

「リュージ殿。何をしているんだ?」
「いや、アンデッドにポーションが効くかもしれないから検証しようと思って」
「俺で試すの!? けど、ハッキリ言って何の効果も無いぞ」
「おかしいな。俺が聞いた話だと、ポーションでアンデッドを倒せるんだけど」
「ガセネタを掴まされたのさ。聖水とかなら別だが、普通の回復薬じゃダメだな」

 残念ながら、某ゲームと同じ効果は無かったか。
 でも、聖水は効果がありそうだな。

「ところで聖水って何なの?」
「教会に居る聖職者たちが浄化した凄い水じゃないのか? たぶん」
「浄化した水か。なら薬草から作れるんじゃないか?」
「いくらリュージ殿が薬師だとしても、聖水は無理なのでは? 回復薬は作れても、聖なる力はどうしようもないだろ」
「そうなんだけど……浄化っていうのが引っ掛かってさ。前にそういう効果がある薬を作った気がするんだ」
「治癒や浄化は教会の専売特許だから、治癒はともかく、浄化まで作れてしまったら……」
「思い出したーっ!」

 俺が突然大声を上げてしまったが、浄化の類のポーションを作った事がある!
 クリア・ポーション――アーニャの呪いを解いたポーションだ。
 呪いを解くって事は、回復や治癒とはまた違う浄化の効果だと思う。
 早速調剤室へ行き、クリア・ポーションを三つ程作ってみた。Aランクが一つとBランクが二つ。
 一先ずBランクのクリア・ポーションを持って皆の所へ。

「ヴィック。浄化効果があると思うんだけど、ちょっと試しても良い?」
「薬師が浄化効果のある薬を作れるとは思えないし、構わないぞ」
「なら、お言葉に甘えて」

 クリア・ポーションを入れた小瓶の蓋を開け、垂らそうとした所で、

「うぉぉぉっ!」

 ヴィックに逃げられてしまった。

「ヴィック。逃げたら効果の検証にならないよ?」
「悪かった。いや、触れなくても分かる。その薬はやべぇ! 触れた瞬間に昇天しちまうよ!」
「じゃあ、アンデッド対策になる?」
「なる。絶対に効くよ。俺からすると、やばいってもんじゃねぇ。リュージ殿たちには無害なんだろうが、即死級のやばさだ」

 検証は出来なかったけど、ヴィックがここまで言うのなら、きっと大丈夫なのだろう。
 流石に即死するって言われる薬をヴィックで試す訳にはいかないしね。

「じゃあ、クリア・ポーションを量産しよう。セシルは材料となるクレイエルの葉を探してきてくれないか?」
「オッケー。早速行ってくるねー」

 暇だったからか、セシルが軽い足取りで出て行き、

「アーニャは夕食の準備をお願い。俺はこれから調合作業をするし、セシルに取って来てもらった分も増えるだろうから、再挑戦は明日の朝にしよう」
「私としては、暫く行かなくても……いえ、何でもないです」

 アーニャがキッチンへと消えて行く。

「リュージ殿。俺は?」
「え? 特に無いかな」
「えー。何かあるだろ? ほら、情報収集とか」
「じゃあ、情報収集で」
「……何の?」
「いや、ヴィックが情報収集って言ったから……」

 ヴィックがしょぼーんとなっているが、幽霊で物に触れる事が出来ず、会話は俺たちとしか出来ない。
 薬草探しはセシルの方が得意だろうし、料理や調合の知識も無さそうなので、拗ねられても困るのだが。

「……そうだ! 今の俺にやるべき事が分かったぜ! はっはっは。明日の朝には戻る。待ってろよ!」

 どうしたものかと考えていると、何か閃いたらしく、ヴィックが笑いながら家を出て行った。