「そうだ、セシル。もしも知っていたら教えて欲しいんだけど……ちょっと来てくれないか」
「ん? なーにー?」
セシルを連れて、二階のキッチンへ。
「これ、使い方って分かる?」
「これって……黒魔法で火の精霊の力を模倣するっていうマジックアイテムでしょ?」
「黒魔法? じゃあ、使おうと思ったら、黒魔法が使えないとダメなのか」
「ううん。黒魔法は仕組みとして使っているだけで、使う時には要らないって聞いた事があるよ。だから、単に魔力を込めてあげれば……ほら、点いた」
俺が昨日使い方が分からず途方に困っていたガスコンロに、セシルがあっさりと火を点ける。
「あのさ、それってどうやるんだ?」
「魔力を送るだけだよ。多く送れば火が強くなるし、少ししか送らなければ火は弱くなるよ」
「……その、魔力を送るって、どうやってやるんだ?」
「どうやって……って言われても、普通に送るだけだよ?」
困った。俺たちが呼吸の仕方をわざわざ教えて貰わないのと一緒で、この世界では魔力を送るという行為が、教える程でも無い当たり前の基本行動なのか。
例えば俺が、右手を前に出す方法を教えてくれと言われても、右手を前に出す……以外に言いようがない。
同じように、この世界では魔法を送るといえば、魔法を送るとしか言いようがないのだろう。
とりあえず、食料は出来ている物を買うか、もしくはコンロだけはセシルに点けてもらうかだな。
一応、一人暮らしで自炊していたけれど、チャーハンやヤキソバを作ってたくらいで、大したものは作れないしね。
じゃあ、先ずは俺の朝食を買いに行きがてら、セシルと観光でもするか。
「よし、セシル。じゃあこれから……って、居ない!? ……セシルー! どこだー!」
いざ出発! と思った所で、セシルの姿が見当たらない。
幸いコンロの火は消してくれているみたいだけど、どこへ行ったのか。
三階……は居ない。一階か?
二階から一階にあるクリニックのスタッフルームへと降り、各部屋を覗いてみると……居た。
「セシル。調剤室なんかで何をしているんだ?」
「調剤室! なるほど。それでかー。お兄さん、これ凄いねー。ありとあらゆる薬草や薬があるねー。あ、調剤って事は、お兄さんは旅の薬師なの?」
「え? そ、そんな感じかな」
異世界から間違って召喚されたサラリーマンとは流石に言えない。
とりあえず適当に誤魔化していると、薬の棚を見て居たセシルが大きな声を上げる。
「うわっ、へーゼルの実がある! しかも、大量に! ねぇ、お兄さん。これ、ポーションにしてよ!」
セシルの言うへーゼルの実が何かと思って見てみると、木の実……というか、へーゼルナッツだった。
お酒のつまみとして一緒に出てくる事がある、アレだ。
こんなナッツがポーションになるの? というか、ポーションにするって、どうすれば良いのだろう。
セシルは何かを期待するような目でジッと待っているし、今更出来ないとは言い難い。
昨日の聴診器の様に、見よう見まねでやってみたらスキルとして使えるかもしれない……というか、そうであってくれ。
祈るような気持ちでへーゼルナッツを手に取ると、近くにおいてあったすり鉢へ入れてみる。
――スキルの修得条件を満たしましたので、お医者さんごっこ「調合」が使用可能になりました――
やった! 予想通りスキルが使えるようになった。
ただ、相変わらずお医者さんごっこというスキル名はどうかと思うが。
内心では喜びつつも、顔に出さないようにしながら、修得したばかりのスキルを使ってみる。
「調合」
そう言うと、すり鉢の中身が一瞬で青色の液体に……って、何故ナッツが青色になるんだ?
若干疑問はあるけど、その辺にあった空のビンに液体を入れ、
「はい、出来たよ」
「凄い! こんなに簡単にマジック・ポーションが作れるなんて!」
「マジック・ポーション? ……あ、いや。まぁね。これくらい、簡単だよ」
「それに、この純度……おそらくAランクかBランクって所だろうね。いや、お兄さん。凄腕の薬師だったんだね」
マジック・ポーションって何だろう。名前から察すると、魔法の力を回復する系かな?
それにランク……AとかBとかって言っていたけど、よくある異世界物では品質とか効力を表す感じだろうか。
昨日使ったポーションもFって書いてあったし、やはりそういう類の意味なのだろう。
……って、AとかBって不味く無いか? 普通、ポーションを作る異世界チートだと、FとかEとかを売って、高ランクのポーションは隠すよね?
「あ、あのさ。セシル。その、俺がAランクやBランクのマジック・ポーションを作れる事は秘密に……」
「なんで? せっかく凄い腕があるんだから、ポーションを作って売ればお金が入ってくるよ?」
「いや、でもAランクやBランクって、珍しいだろ?」
「そうかなー? ボクの所には普通にあったよ? AとかSとか」
あー、なるほど。Aが一番上じゃないパターンか。SとかSSとかが存在する世界か。
なら、AとかBじゃ騒がれないか。
だとしたら、薬草を集めて調合スキルでポーションにして売る……うん。これなら、旅をしながらでもお金が稼げそうだ。
「ん? なーにー?」
セシルを連れて、二階のキッチンへ。
「これ、使い方って分かる?」
「これって……黒魔法で火の精霊の力を模倣するっていうマジックアイテムでしょ?」
「黒魔法? じゃあ、使おうと思ったら、黒魔法が使えないとダメなのか」
「ううん。黒魔法は仕組みとして使っているだけで、使う時には要らないって聞いた事があるよ。だから、単に魔力を込めてあげれば……ほら、点いた」
俺が昨日使い方が分からず途方に困っていたガスコンロに、セシルがあっさりと火を点ける。
「あのさ、それってどうやるんだ?」
「魔力を送るだけだよ。多く送れば火が強くなるし、少ししか送らなければ火は弱くなるよ」
「……その、魔力を送るって、どうやってやるんだ?」
「どうやって……って言われても、普通に送るだけだよ?」
困った。俺たちが呼吸の仕方をわざわざ教えて貰わないのと一緒で、この世界では魔力を送るという行為が、教える程でも無い当たり前の基本行動なのか。
例えば俺が、右手を前に出す方法を教えてくれと言われても、右手を前に出す……以外に言いようがない。
同じように、この世界では魔法を送るといえば、魔法を送るとしか言いようがないのだろう。
とりあえず、食料は出来ている物を買うか、もしくはコンロだけはセシルに点けてもらうかだな。
一応、一人暮らしで自炊していたけれど、チャーハンやヤキソバを作ってたくらいで、大したものは作れないしね。
じゃあ、先ずは俺の朝食を買いに行きがてら、セシルと観光でもするか。
「よし、セシル。じゃあこれから……って、居ない!? ……セシルー! どこだー!」
いざ出発! と思った所で、セシルの姿が見当たらない。
幸いコンロの火は消してくれているみたいだけど、どこへ行ったのか。
三階……は居ない。一階か?
二階から一階にあるクリニックのスタッフルームへと降り、各部屋を覗いてみると……居た。
「セシル。調剤室なんかで何をしているんだ?」
「調剤室! なるほど。それでかー。お兄さん、これ凄いねー。ありとあらゆる薬草や薬があるねー。あ、調剤って事は、お兄さんは旅の薬師なの?」
「え? そ、そんな感じかな」
異世界から間違って召喚されたサラリーマンとは流石に言えない。
とりあえず適当に誤魔化していると、薬の棚を見て居たセシルが大きな声を上げる。
「うわっ、へーゼルの実がある! しかも、大量に! ねぇ、お兄さん。これ、ポーションにしてよ!」
セシルの言うへーゼルの実が何かと思って見てみると、木の実……というか、へーゼルナッツだった。
お酒のつまみとして一緒に出てくる事がある、アレだ。
こんなナッツがポーションになるの? というか、ポーションにするって、どうすれば良いのだろう。
セシルは何かを期待するような目でジッと待っているし、今更出来ないとは言い難い。
昨日の聴診器の様に、見よう見まねでやってみたらスキルとして使えるかもしれない……というか、そうであってくれ。
祈るような気持ちでへーゼルナッツを手に取ると、近くにおいてあったすり鉢へ入れてみる。
――スキルの修得条件を満たしましたので、お医者さんごっこ「調合」が使用可能になりました――
やった! 予想通りスキルが使えるようになった。
ただ、相変わらずお医者さんごっこというスキル名はどうかと思うが。
内心では喜びつつも、顔に出さないようにしながら、修得したばかりのスキルを使ってみる。
「調合」
そう言うと、すり鉢の中身が一瞬で青色の液体に……って、何故ナッツが青色になるんだ?
若干疑問はあるけど、その辺にあった空のビンに液体を入れ、
「はい、出来たよ」
「凄い! こんなに簡単にマジック・ポーションが作れるなんて!」
「マジック・ポーション? ……あ、いや。まぁね。これくらい、簡単だよ」
「それに、この純度……おそらくAランクかBランクって所だろうね。いや、お兄さん。凄腕の薬師だったんだね」
マジック・ポーションって何だろう。名前から察すると、魔法の力を回復する系かな?
それにランク……AとかBとかって言っていたけど、よくある異世界物では品質とか効力を表す感じだろうか。
昨日使ったポーションもFって書いてあったし、やはりそういう類の意味なのだろう。
……って、AとかBって不味く無いか? 普通、ポーションを作る異世界チートだと、FとかEとかを売って、高ランクのポーションは隠すよね?
「あ、あのさ。セシル。その、俺がAランクやBランクのマジック・ポーションを作れる事は秘密に……」
「なんで? せっかく凄い腕があるんだから、ポーションを作って売ればお金が入ってくるよ?」
「いや、でもAランクやBランクって、珍しいだろ?」
「そうかなー? ボクの所には普通にあったよ? AとかSとか」
あー、なるほど。Aが一番上じゃないパターンか。SとかSSとかが存在する世界か。
なら、AとかBじゃ騒がれないか。
だとしたら、薬草を集めて調合スキルでポーションにして売る……うん。これなら、旅をしながらでもお金が稼げそうだ。