「リュージさん。私の症状は何だったんですか?」
「ララさんは、蛙毒に掛かっていたみたいです」
「蛙毒……なるほど。恩人であるリュージさんにこんな事を言いたくはないのですが、ギルドとしては、もう少しお薬の価格を下げていただけると助かります」

 ララさんとしては、街の人を全員救いたいのだけれど、ギルドとしても資金が無限に有る訳ではないので、コストは下げたい。
 でも商人ギルドという組織である以上、公正な取引を行わなければならず、俺が値下げすると言ってもダメなのだろう。

「承知しました。では暫くここで診療所を開いていますので、一時間経ってから街の人たちにここを紹介してもらえますか?」
「出来れば、今すぐにでも街の人たちを助けて欲しいのですが、ダメでしょうか?」
「その一時間でパナケア・ポーションではなく、蛙毒に効く適切な薬を用意するので……」
「分かりました。治療費は全て当ギルドでお支払いいたしますので、後で治した方のお名前と、用いた薬を教えてください」

 商人ギルドの正式な依頼として説明を受け、ララさんがギルドへ帰った後、再びセシルに話を聞く。

「セシル。さっき教えてくれたシーブーキっていう薬草より、もう少し軽めで、蛙毒に効く薬草って知らない?」
「軽めってどういう事?」
「シーブーキだと色々な症状に効果があるんだけど、高価すぎるからもう少し安価な薬にして欲しいって言われちゃってさ」
「シーブーキって高額なの? ボクの家に沢山生えていたんだけど」

 セシルの家に万能薬の元が生えてたんだ。
 というかセシルは貴族令嬢だし、値段とかあまり気にしないよね。
 AランクやBランクのポーションが普通だって言っていたし。

「値段の事は分からないけど、シーブーキみたいに何にでも効く薬草ではなくて、蛙毒に効く薬草はどれ? って事だよね?」
「そういう事。セシル、何かある?」
「そうだねー。これと、これ。あと、こっちとかも良いかなー」
「ありがとう! 今教えてくれた薬草って、この辺りに生えていたりするの? 今から大量にポーションを作らないといけないんだけど」
「という事は、暫くここに家を置いたままにするのかな? だったら、ボクが薬草を探して来るよ」
「いいの? それは助かる。アーニャにもついて行って貰った方が良いかな?」
「ううん、大丈夫だよ。じゃあ、ちょっと行ってくるねー!」

 そう言って、セシルが薬草を探しに家を出る。
 俺もポーションを準備しておこうと思ったんだけど、気付いた事があってアーニャを呼ぶ。

「リュージさん。どうされました?」
「この後、一階のクリニックの部屋に街の人が大勢来るから、アーニャに受付と薬の配布をお願いしたいんだ」
「受付はともかく、薬の配布なんて言われても、何を渡せば良いか分からないんですけど」
「それは俺が指示するよ。流れとしては、街の人が来たら受付カウンターで名前を聞いて、診察室が空いていればその人を診察室へ。空いて無ければ、入ってすぐの場所で待ってもらって欲しいんだ」
「待って居る人は、診察室が空き次第、来た順にお呼びする感じですね?」
「そうそう。で、これから薬を用意しておくから、そこの保管庫から俺が言った薬を取って、渡してあげて欲しいんだ」

 受付をアーニャがして、セシルが薬草を調達し、俺が薬の調合と診察を行って、アーニャが薬を患者さんに渡す。
 急造ではあるものの、実家で両親が行っていたのと、似たような形にはなっていると思う。
 それから、セシルから教えてもらった薬草をひたすら調合していくと、キュア・ポイズンにキュア・パラライズ、キュア・コンフューズという薬が出来た……が、いずれもAランクとBランクばかりだ。
 どうやったら、CランクやDランクの薬が出来るのだろうか。
 水で薄めたら、出来るかな?
 そう思って、実験してみようかと思った所で、

「リュージさん! 大変です。沢山人がやってきました!」

 もう一時間が過ぎていたみたいで、クリニック側の入口に街の人たちが並んでいた。