半日近く馬車に座り、ようやくモラト村へ到着した。
だが降りたのは俺だけで、他の乗客は更に遠くへ行くらしい。
ちなみに、最初に召喚された城下町と比べると、明らかに人が少ないし、リクエスト通りの田舎なのだろう。
だけど観光の前に、馬車の中で突然使えるようになった城魔法というのを使ってみたい。
なので、石壁に囲まれた村を出ると、人気の無い林の中へと進んで行く。
「ここなら誰も来ないだろうし、早速……城魔法『サモン』!」
スキルの使い方なんて分からないから、少し開けた場所で、とりあえず右手を前に突き出して叫んでみると、目の前が真っ白に光り輝く。
しかし、光は一瞬で収まり、視界に見慣れた建物が映っていた。
斉藤クリニックと描かれた看板に、白い塀。横に回ると植え込みがあって、斉藤の表札が付いた住居用の扉がある。
「……って、これ。うちの実家!?」
いや、マジでそのまんま実家なんだけど。
三階建ての実家は、一階が診療所で二階にリビングやキッチン。三階が俺や妹の部屋だ。
まぁ妹と言っても、まさかの学生結婚で、既に娘――俺からすると姪にあたる、真衣ちゃんがいるんだけどさ。
妹はどうでも良いけど、可愛い真衣ちゃんの事を思い出しつつ中へ入ると、住居用の玄関もリビングに、俺の部屋も、ほぼそのままだった。
ただ、どういう訳か、一部の家電製品が無くなって居たり、形が変わっていたりするけど。
「冷蔵庫やコンロなんかのキッチン周りはそのままなのに、リビングのテレビとパソコンが無くなってるのは何故だ?」
ちなみに、ソファやエアコンなんかは、そのままある。でも、電子レンジはなくなっていたけど。
一方、三階にある俺の部屋はというと、
「あぁっ! ゲーム類が全く無い! あのRPG、めちゃくちゃやり込んだのに!」
テレビに接続するタイプや携帯ゲーム機、それらに関する攻略本まで、どういう訳か綺麗に消えてしまっていた。
「でも、漫画やラノベはほぼ全て残っているんだよなー。一体、どうなっているんだ?」
ゲームが無くなったのは悲しいけど、大量に集めた漫画やラノベは無くなっていない。
他に残った箇所は……と、一階へ降りてみると、クリニックも概ねそのままだ。
とはいえ、クリニックにあるものは、元々何が何だか俺には分からないけどさ。
……そういえば、父さんがこの家とクリニックの事を自分の城だって呼んでいたけど、もしかして城魔法って、実家を異世界へ呼び出すスキルなのだろうか。
「まぁいいや。とりあえず、これで寝る場所には困らないって事が分かったし、慣れた実家で寝泊まりしながら異世界を観光出来るなんて最高じゃないか」
そう言って、喉がカラカラな事に気付く。
考えてみたら、半日近く飲まず食わずだったんだよな。
異世界だけど、冷蔵庫があるんだ。中身も大丈夫だろうと軽い気持ちで冷蔵庫の扉を開け、
「……え? ビン? ペットボトルが無いけど……母さんが突然エコに目覚めた? いや、そんな事は無いと思うんだけど」
いつも必ず二リットルの水が入っている場所に、透明な液体が入ったガラスビンが置かれて居た。
冷凍食品は!? と思って冷凍庫を開けると、凍った肉の塊だけが入っている。
必ずと言って良いくらいに、いつも冷凍のうどんが入っていたのにな。
よくよく見てみると、所々冷蔵庫のデザインが微妙に違う。
温度調整用のつまみがあったはずなのに、それも無いし、
「って、コンセントが無いっ! 何これ、どうやって動いてるの!?」
冷蔵庫に絶対あるべき線、それが無かった。
水道は? ……うん、普通に使える。
恐る恐る手を伸ばして水道の水を飲んでみると……普通の水だ。
じゃあ、コンロは?
「えぇぇ……ボタンが無いんだけど」
火を点けるボタンも、火力を調整するレバーも無い。
IHだったはずなのに、ガスコンロになっているのはさておき、そもそもの使い方が分からない。
トイレやお風呂は問題なし。
意外な所で、食器棚にある真衣ちゃん用の割れない食器――プラスチック製の食器が木の食器に変わっている。
「プラスチック製の物が、木製やガラス製に置き換わっているのか? ……異世界にプラスチックが無いから?」
という事は、テレビやゲーム、他にパソコンなんかが消えて居るのも、異世界に存在しない物だからという事か。
つまり、この世界には冷蔵庫やエアコンなんかは存在すると。
何となく法則が分かって来た所で、腹が減ってきたけど、電子レンジが無くなっていて、コンロが使えないのは困った。
とりあえず、村で何か食べ物を買う事にしたんだけど、
「なるほど。俺が家から出ると消えるのか」
俺が玄関から外へ出ると、実家が消えて居る。
念の為、城魔法『サモン』を使ってみると、ちゃんと家が現れたし、問題なさそうだ。
日が落ち始め、茜色に染まる村の中を走り回り、露店で旨そうな見た目と匂いのする物を適当に頼んで腹を満たす。
それから明日の朝食として、サンドイッチみたいにパンで野菜や肉を挟んだ食べ物を買うと、急いで村の外へ。
先程の林の中でもう一度城魔法を使おうとして、
「……ん? 人? 子供……か!?」
倒れている少年を発見してしまった。
だが降りたのは俺だけで、他の乗客は更に遠くへ行くらしい。
ちなみに、最初に召喚された城下町と比べると、明らかに人が少ないし、リクエスト通りの田舎なのだろう。
だけど観光の前に、馬車の中で突然使えるようになった城魔法というのを使ってみたい。
なので、石壁に囲まれた村を出ると、人気の無い林の中へと進んで行く。
「ここなら誰も来ないだろうし、早速……城魔法『サモン』!」
スキルの使い方なんて分からないから、少し開けた場所で、とりあえず右手を前に突き出して叫んでみると、目の前が真っ白に光り輝く。
しかし、光は一瞬で収まり、視界に見慣れた建物が映っていた。
斉藤クリニックと描かれた看板に、白い塀。横に回ると植え込みがあって、斉藤の表札が付いた住居用の扉がある。
「……って、これ。うちの実家!?」
いや、マジでそのまんま実家なんだけど。
三階建ての実家は、一階が診療所で二階にリビングやキッチン。三階が俺や妹の部屋だ。
まぁ妹と言っても、まさかの学生結婚で、既に娘――俺からすると姪にあたる、真衣ちゃんがいるんだけどさ。
妹はどうでも良いけど、可愛い真衣ちゃんの事を思い出しつつ中へ入ると、住居用の玄関もリビングに、俺の部屋も、ほぼそのままだった。
ただ、どういう訳か、一部の家電製品が無くなって居たり、形が変わっていたりするけど。
「冷蔵庫やコンロなんかのキッチン周りはそのままなのに、リビングのテレビとパソコンが無くなってるのは何故だ?」
ちなみに、ソファやエアコンなんかは、そのままある。でも、電子レンジはなくなっていたけど。
一方、三階にある俺の部屋はというと、
「あぁっ! ゲーム類が全く無い! あのRPG、めちゃくちゃやり込んだのに!」
テレビに接続するタイプや携帯ゲーム機、それらに関する攻略本まで、どういう訳か綺麗に消えてしまっていた。
「でも、漫画やラノベはほぼ全て残っているんだよなー。一体、どうなっているんだ?」
ゲームが無くなったのは悲しいけど、大量に集めた漫画やラノベは無くなっていない。
他に残った箇所は……と、一階へ降りてみると、クリニックも概ねそのままだ。
とはいえ、クリニックにあるものは、元々何が何だか俺には分からないけどさ。
……そういえば、父さんがこの家とクリニックの事を自分の城だって呼んでいたけど、もしかして城魔法って、実家を異世界へ呼び出すスキルなのだろうか。
「まぁいいや。とりあえず、これで寝る場所には困らないって事が分かったし、慣れた実家で寝泊まりしながら異世界を観光出来るなんて最高じゃないか」
そう言って、喉がカラカラな事に気付く。
考えてみたら、半日近く飲まず食わずだったんだよな。
異世界だけど、冷蔵庫があるんだ。中身も大丈夫だろうと軽い気持ちで冷蔵庫の扉を開け、
「……え? ビン? ペットボトルが無いけど……母さんが突然エコに目覚めた? いや、そんな事は無いと思うんだけど」
いつも必ず二リットルの水が入っている場所に、透明な液体が入ったガラスビンが置かれて居た。
冷凍食品は!? と思って冷凍庫を開けると、凍った肉の塊だけが入っている。
必ずと言って良いくらいに、いつも冷凍のうどんが入っていたのにな。
よくよく見てみると、所々冷蔵庫のデザインが微妙に違う。
温度調整用のつまみがあったはずなのに、それも無いし、
「って、コンセントが無いっ! 何これ、どうやって動いてるの!?」
冷蔵庫に絶対あるべき線、それが無かった。
水道は? ……うん、普通に使える。
恐る恐る手を伸ばして水道の水を飲んでみると……普通の水だ。
じゃあ、コンロは?
「えぇぇ……ボタンが無いんだけど」
火を点けるボタンも、火力を調整するレバーも無い。
IHだったはずなのに、ガスコンロになっているのはさておき、そもそもの使い方が分からない。
トイレやお風呂は問題なし。
意外な所で、食器棚にある真衣ちゃん用の割れない食器――プラスチック製の食器が木の食器に変わっている。
「プラスチック製の物が、木製やガラス製に置き換わっているのか? ……異世界にプラスチックが無いから?」
という事は、テレビやゲーム、他にパソコンなんかが消えて居るのも、異世界に存在しない物だからという事か。
つまり、この世界には冷蔵庫やエアコンなんかは存在すると。
何となく法則が分かって来た所で、腹が減ってきたけど、電子レンジが無くなっていて、コンロが使えないのは困った。
とりあえず、村で何か食べ物を買う事にしたんだけど、
「なるほど。俺が家から出ると消えるのか」
俺が玄関から外へ出ると、実家が消えて居る。
念の為、城魔法『サモン』を使ってみると、ちゃんと家が現れたし、問題なさそうだ。
日が落ち始め、茜色に染まる村の中を走り回り、露店で旨そうな見た目と匂いのする物を適当に頼んで腹を満たす。
それから明日の朝食として、サンドイッチみたいにパンで野菜や肉を挟んだ食べ物を買うと、急いで村の外へ。
先程の林の中でもう一度城魔法を使おうとして、
「……ん? 人? 子供……か!?」
倒れている少年を発見してしまった。