「おーい、ソラ」

 クロが手を上げたので、俺も挙手で返す。

「なになに、ソラくん。この可愛い子は、一体誰?」

 一足お先にという感じで、アオさんがこっちへと近づいてきた。ニヤニヤして、やーらしい視線を俺に向けては、チラチラと天の方を見る。お姉さんに紹介しなさい、って言う感じか。

 本当はいの一番にクロに紹介したかったけれど、アオさんは実の姉よりお世話になっている人だしな。

「えっと、アオさん。こいつは……」

「メアリーも生まれ変わってたんだ!」

 紹介しようとした俺の台詞を遮るように、天がまたよく分からない話を抜かした。

「……め?」とアオさんが目を点にした。

「おい、ちょっ……天! そら! ソラ、この野郎!」

 俺は天の肩を掴んで、アオさんから引き離す。

「お前、まだそんな話してたのか」

 黒魔導士と蒼魔導士の話だって、人前ではしないってのに。どうして今回に限っては、こんなに引っ張るんだよ。

「……そういえば、クレアはメアリーやギムレットとは面識無かったっけ」

 いけない、という顔をして天は言った。何を言っているのかサッパリだけど、いけないのはそういう意味じゃない。

「プコサテュ、メアリ?」

 謎の言葉に顔を上げると、いつの間にか、きのみさんが俺たちの前に居た。彼女は今、何て言ったんだ。

「ヴァネットシドル語! てことは君も関係者?」

 天が言うと、何故かきのみさんは甘い物でも見つけたかのように、嬉しそうな顔になった。二人が何かで通じ合ったような感じがしたけど、俺はそれが何だか全く分からなかった。

「わたしは……」

「おいっ!」

 大きな声を出して、クロがきのみさんの肩に手を乗せた。従兄の顔は今までに見た事もないくらい真剣で、少し怖いと思うくらいだった。

「……ごめんアオさん。少し用事が出来た」

 クロはアオさんの方を向き、苦笑いで頭を下げていた。

 一体、何が何だか。もう分からない。クロ、きのみさん、アオさん。ただの仲の良い友達だと思ってたけれど、俺の知らない何かがあるっていうのかもしれない。