バーベキューだけれど、火は大丈夫かな。って感じで、天に心配された。
皆結希さんに会えるっていうから、喜んできたけれど。よく考えたら、全く大丈夫じゃなかった。なるべく火の方を見たくないので、彼女に肉を取って貰えるかお願いした。
ジャッカスさんがちゃんと聞き耳を立てていたので、ざっと経緯は説明した。小さいときに火事に巻き込まれて、それ以来駄目っていう感じで。何て質問をしているんだ、と皆結希さんがジャッカスさんにケリを入れていた。
「大丈夫です。俺も皆結希さんの家の事、少し知ってしまったんで。これで、おあいこです」
俺がそう言った瞬間、皆結希さんは思い切りコーラを吹きだした。目の前に居たジャッカスさんの顔が、コーラの色に染まった。
困惑している俺を引っ張って、皆結希さんは少し離れた場所まで連れてきた。小さな声で、どこまで知っているのか、誰に聞いたのかを聞かれた。
「ほ、ほたるさんです。ホイップのほたっち」
少し考え事をするかのように、皆結希さんは腕を組み始めた。まずい。もしかしたら俺の知るべきでは無い話を、知ってしまったのかもしれない。
バクバク暴れる心臓を抑えながら、皆結希さんの返答を待った。彼の口から出てきたのは、思ってもみない言葉だった。
「……ほたるって誰だっけ?」
「あなたの従妹でしょうが!」
ツッコミを入れてから、皆結希さんなりのジョークじゃないかって思った。けれど、彼は先ほど以上に驚いた眼をしていた。もしかして、この人マジで言っているのか。
「え、オレ。タマちゃん以外に従妹居るの?」
「知りませんよ!」
そう言ってから、俺は先日の南タマキさんの話を思い出す。
「タマキさんが南側で、ほたるさんが若葉田側って言ってましたよ?」
「若葉田側……。ほー、そうなんか」
何故か知らないけれど、他人事のように言った。さっきまで緊張していたのが馬鹿らしくなって、なんか妙に気が抜けてしまった。
というか、この間ほたるさんが随分長く会ってない、とか言っていたっけか。存在を忘れてしまう程、長く会ってないのか。それにしたって忘れてしまうものなのか。
皆結希さんの家庭はすこし変わっているな、って思ったけれど。妙なのは、彼自身なのかもしれない。