何処にいるのって、天から連絡が入った。
これ以上は邪魔でしかない俺は、急いでお茶を飲み干す。二人にお礼を言って、退散を試みる。
「お礼を言うのはこっちの方よ」
南タマキさんを抱きしめながら、ほたるさんは言った。けれど、今の俺は天で頭が一杯だったので、よく分からないまま店を後にした。
駅には駆け入ったけれど、電車には駆け込まないようにしよう。来るまでの五分が、クイズ番組の正解が出るまでの時間以上に長く感じる。電車が来た途端、CM開け以上の気持ちになる。
電車が発進して、大きく揺れる。君への愛しさで、心がまたゆらり揺らめく。逢えなくても、会いたくて、逢いたくて。思うほどに込み上げる胸の中に、染み付いた言葉を早く彼女に伝えたくて仕方がない。
この声が聴こえたら、柔らかな風を吹かせて。ありふれ過ぎている君の名前を口にしたら、今も傍にいるような気がして。だけれど、それじゃ足りないから飛んでいくんだ。君の元へ。
長かった一駅、飛び越えたい気持ちを押し殺してホームへと駆け降りる。
ドキドキする心臓を押さえつけて、階段を下りる。
エスカレーターを駆け上って、ロータリーへと舞い戻る。
ドーナツ屋を尻目に、階段を必死に上る。歩道橋を渡る。
テレビ局を横目に、公園へと入る。
再び歩道橋を掛け渡って、広い原っぱを目の当たりにする。
沢山あるベンチの中の一つに、彼女の姿を見つける。
「おっし……」
何かを言いかけた彼女を、俺は思いっきり抱きしめた。