その足で向かったのは、クロ達の通う高校だった。

 一応、何時に終わるのかだけは聞いておいた。三時くらいと返ってきたので、丁度いい時間だった。

 天と二人で駅前を歩いてみると、放課後デートみたいだって思った。

 もしかしたら道行く人達にも、そう思われているのかもしれない。さっきから、チラチラと視線は感じるしな。天も可愛いタイプの顔だし、俺もイケメンだし。

 クロ達の通う高校は、山の中腹辺り。坂を上ると直ぐに校門が見えてしまい、そこで待つには一目がありすぎる気がした。坂の下にあたりに丁度いいベンチがあったので、そこで天と座って待つ。

「何か飲む?」

 天が道路向かいの自動販売機を指して言った。

「いや、クロはすぐ来るって話だから」

 俺が首を左右に振ると、天は笑顔で頷いた。前までは色とりどりのチューリップみたいに思ってたのに、今はタンポポのような笑みだった。不覚にも可愛いとか、思ってしまった。

 キスされたからか、非常に意識してしまっている気がする。あのヴァネットなんたらとかいう、訳の分からない話さえなければ、天と付き合ってもいいって思うくらいだけれど。

 実際、天の方はどうなんだろう。俺が前世の嫁だとか言うけどさ。もしかして、それをダシに俺と良い感じになりたいって、思っているだけなんじゃないんだろうか。

 いやきっと、そうに決まっている。今までだって冗談半分で俺が黒魔導士とか、天が蒼魔導士とかいう話もし合う仲だったしな。こうしてクロに会いに来たのだって、本当は俺に天を紹介させる為だろう。そういうのなら判ったよ。

 はなし声が聞こえたので、坂の先を見てみる。クロがきのみさんとアオさんと、三人で歩いて来ている。

 きのみさんとアオさんはクロの女友達で、俺とも見知った仲である。従兄の方も女子の友達が多いから、こっちも似たような状況なのが、あまり気にならないように出来る。

 上谷戸きのみさん。クロより少しばかり背が高くて、料理上手で綺麗な女の人。俺の姉とも仲良いから、たまに家に来てはお菓子を振る舞ってくれる。天然が入っているのか、たまに面白い話をしては場を和ませるムードメーカー。

 大丸アオさんは、俺より少し背は小さい。きのみさんが綺麗系ならば、彼女は可愛い系だ。年上を可愛いとか言うのは、失礼かもだけれど。きのみさんがボケると、すぐさまツッコミを入れてくれる役。アオさんが居るからこそ、きのみさんの面白さが成立するのだ。

 多分、クロはどっちかの事が好きだ。悪いなクロ、従弟が先を越してしまうぞ。