さて、協力してくれと言ったはいいものの。具体的に何をどうするかは、全く考えていなかった。
俺はノートを取り出して、どうしたらいいのか。どうすればいいのかを、並べてみようと考えた。
一つ一つ書き出してみると、これが本当にわかば先輩が望むことなのか、分からなくなってきた。
ほたるさんがああ言ってはいるけれど、わかば先輩の真意は分からない。クロと似た状況だから手助けしてあげたい、って俺が勝手に思っただけなのだ。
廊下に出て、クロの部屋をノックする。どうぞの声にドアを開けると、従兄は珍しく本を読んでいた。
「……そんな顔して、どうした?」
どんな顔をしていたのかは分からないけれど、クロが心配そうな声を掛けた。っていうと、よっぽどな顔をしていたのかもしれない。
「……聞きたいことがあって」
ヴァネット・シドルの話かと問われたので、俺は首を左右に振った。
考えてみれば、これってクロにとってもデリケートな話なんじゃないか。俺は言うのを躊躇ってしまった。家族とはいえ、何を言ってもいいってわけじゃない。どうしたものかと思いあぐねいていると、クロが手招きをしてきた。
「お菓子、食うか?」
テーブルの上にあったクッキーを指さして、クロはそう言った。まずい、気を遣わせてしまっている。まるで俺が、甘いものに釣られる人間みたいじゃないか。
長丁場になる程、言いだしづらくなるかもしれない。変にこれ以上、気を遣われたくなかったので、さっさと言ってしまおう。
「クロ。……もし、だぞ? 親父さんに……会えるって、なったら……会いたいって思うか?」
自分でも思った以上に、たどたどしくなってしまった。俺の台詞に従兄は、少し考えるような仕草を取ってから、にっこりと笑った。
「あの世には、まだ行きたくないな」
クロなりの冗談だったのかもしれないけれど、俺は苦笑いしか出てこなかった。
「たとえ話。……もし、前世がクロの親父さんっていう、人が現れたら。……会いたい、って。思うか?」
再び腕を組み、クロは悩むように考える。これで会いたくないって言ったなら、俺はどうすればいいのだろうか。
「向こうが、そう思ってないのなら……」
やっぱりそうか。クロもそのあたりは、気を遣う人間だ。従兄がそうならば、わかば先輩なんて猶更だって思ってしまう。その言葉に、二の足を踏んでしまいそうになる。